比較広告資料館 弁理士 山口朔生
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比較広告判例集
目次

肥満症と糖尿病の治療薬

(ノボ・ノルディスク vs. イーライリリー)

イーライリリー社の広告

1)イーライ(米国の製薬メーカー)(以下「イーライ」)は肥満症の治療薬のTVでのCMで以下のような比較広告を流しました。

要約すると次の通りです。
イーライ・リリーの
ゼップバウンド
ノボの「ウゴービ
50ポンド 33ポンド
減量20.2% 減量13.7%
イラストでは太った女性が浮き輪で楽しそうですが、減量の数字がイーライの「ゼップバウンド」の圧倒的な減量効果を印象付けています。

2)イーライはこれとは別に、糖尿病の治療薬では次のような広告を


イーライの「マンジャロ」と、ノボの「オゼンピック」の容器を背景に
両者は同じような作用をします。
だけど当社の「マンジャロ」はより早く効きます。

これらのCMは4月下旬から放映されて、7億回以上のインプレッションを記録したそうです。

ノボの訴え

比較されたノボは、2026年の7月21日に米国の連邦地裁に提訴しました。
まだ提訴したばかり、判決が出たわけではないから経過だけを報告します。

ノボは比較がウソだとは主張していません。
ではなにを?
採用している薬品の規格が違う、というのです。

1)肥満症の治療薬については。
比較しているのは当社ノボの「ウゴービ」の2.4mgだ。
しかし当社は、すでに7.3mgの薬品が承認されており、
こちらなら減量効果は大幅に改善されている。
ほぼイーライの「ゼップバウンド」と変わりがない、と。

2)糖尿病の治療薬については。
比較しているのは当社ノボの「オゼンピック」の1mgだ。
しかし当社はすでに2mgの薬品が承認されており、
こちらと比較すべきだ、と。

3)よって広告主のイーライは総合的な印象で消費者をミスリードしている。
その上に消費者はこまかい注意書きなど読まないのだから。

イーライの反論

その訴えに、広告主のイーライは反論しました。
医薬品の比較では「ヘッド トゥ ヘッド試験」がスタンダードだ。
この広告は、その試験結果をそのまま使っただけだ、と。

ヘッド トゥ ヘッド試験とは、
試験医薬品(新薬)と既存の医薬品とを用い「1:1」で「優劣」を決める臨床比較試験のこと
だから何が悪い、という主張です。

問題はどこに?

まだ判決が出た段階ではないから、なんとも言えませんが、
論点はデータの真偽ではなく、消費者に与える公平性の問題ではないか、
と推測されます。

比較広告における「公平性」とは、
今回のように、ライバルの劣った商品を取り上げてあえて比較してみせる、
ということも、公平性に欠ける、と言えるでしょう。

たしかに広告主のリーライは、新薬のテストで比較した結果を開示しました。
しかし消費者は、「ヘッド トゥ ヘッド」なんていう専門的なテストは知らないし、興味もないです。
結局、大きく描かれた数字を見て、直感的に理解します。
「おっ!こっち(リーライ)は50ポンドの大幅減量ね。こっちにしよう!」

まだ判決は先になりますが、広告主のリーライにとって不安でしょうね。

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