この提案の時点では私の無知というか、先方は一流の雑誌なのだから今回の記事も比較広告に対する見方の一つであり、他の見方も公平に扱うはず、と単純に考えていたのでした。
ところがいつまで待ってもなんら連絡がありません。そこで記者宛に2回電話をしたのですが、二度とも居留守(?)を使われ、伝言も無視されて折り返しの電話もありません。
そこでやっと気が付いたのです。
この雑誌にとって「消費者の利益」なんかどうでもよいのだ。それよりも広告主である業界の代弁者として、業界の横並びからはみ出すような消費者に分かりやすい比較広告、すなわち出る杭はあらゆる力で叩くこと、これがこの雑誌自体の方針、そしてバックについている広告主の方針なのだ、と。
だから賛否両方の見解を公平に載せる、なんていう発想はなかったのですね。
同業者からの妨害も
また前後しますが、この比較広告が出た直後に、ライバル会社からオリックス生命に対して、5頁にわたる「問題点の指摘」の書類が郵送されました。
オリックス生命の比較広告の記載を細かく分解して、それと金融庁の「監督指針」とを対比させたものです。
それを精読すると、やはり「消費者の利益」の視点なんカケラもありません。消費者に分かりやすい比較広告を公表して業界の秩序を乱すな、という発言ばかりです。
例えば、今回の比較は保険金額1,000万円の事例だけだが、しかし2,000万円ではB社の方が安くなるケースもある、というものです。
確かにそうなのでしょうが、そうするとでは3,000万では、4,000万では、・・・という結局は比較できない複雑なものになり、元の木阿弥になってしまいます。
複雑に並べて、結局は消費者には分からないものにせよ、と言っているのです。
しかしこの比較広告で出した1,000万円という数字は、いい加減に並べた数字ではなく、区切りがよくて加入者がもっとも多く選択する数字なのだそうです。
それに、もし2,000万円で比較したいのなら、今度はB社が分かりやすい比較広告を出せばいいじゃないか、と言いたいです。するともっと消費者の利益が増進します。
同業者からの書類の別の箇所ではこうも言っています。
コールセンターに「A社、B社の契約概要が欲しい」と連絡したところ断られたが、これは監督指針に反している。しかしもし契約概要を渡したら、A社の業務の代理認可を受けていなければ違法である、というものです。
これなんか、どこかでひっかけてやろう、というやり方がみえみえのやり方ですが、そんなことは情報を簡単に知って比較したい消費者には関係ないことです。
その他、重箱の隅をつつくような文句が並んでいますが、当然、同じ文書は金融庁へも提出したはずです。しかし前記したようにオリックス生命へのその後の監査の時には金融庁から、そんな指導は一切なかったのです。
だからこの文書も、なんとか困らせて「消費者に分かりやすい比較広告はつぶせ!」という業界団体の圧力を表したものとしか言えません。
これは保険業界に疎い私が感じているだけではありません。
例えば保険コンサルタントで著書も多い後田亨氏が、平成24年7月27日の「日本経済新聞電子版」で「保険を比べてほしくない業界の本音」として、オリックス生命の比較広告を詳しく説明しています。
そこでは結論として「いずれにしても消費者にとっては大半の保険が比べにくいのは事実です。理由は、保険会社の都合が大きいように感じます。」と述べておられます。
以上、オリックス生命の広告を通して知った、あからさまな比較広告のつぶし方、すなわち「消費者の利益」のつぶし方の具体例でした。