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消費者に有用か?
まず商標権者の利益ではなく、消費者の利益の有無です。
公正な競争のもとで消費者に有用な情報を提供できるのならそれが優先される。
商標権者はライバルに使用されても許さざるを得ない、これが比較広告に対する裁判所の一致した見解となっています。
では本件ではどうか。
代替食の製造が1社だけでなく複数存在すること、しかも種類の豊富さを知らせる比較広告です。
これは消費者にとって価値のある有用な情報の提供といえる。
ではSFの比較広告を禁じたらどうか。
こんな有用な情報が消費者に届かないことになる。
したがってSFが他人の商標を引用して比較するやり方を禁じることはできない、と裁判所は判断しました。
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混同しないか?
ランハム法は原則として他人の商標の使用を禁止していますが、しかし一律に禁止しているわけではないです。
この比較広告でいえばWWの食品を購入するつもりで誤ってSFの食品を買ってしまった、という混同の発生が重要。
この比較広告ではどうだろう。
すべて「WWの代替食です」と印刷してある。
するとほとんどの消費者は誤ってSFの食品を買ってしまうといった混同は発生しないだろう、と裁判所は判断しました。
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誤認はないか?
WWの名称は登録商標であるだけでなく、当時でも25年の歴史があり、世界18カ国で毎週50面人が参加しているという組織です。
第三者がそうした著名な商標を利用すれば、提携関係にあるか、保証されているかといった誤解を与えることになるでしょう。
その点を考慮してか、SFの比較広告では常に「提携関係はありません」と明記しています。
そのために著名商標を利用したとはいえ、WWの主張するような「消費者が誤解した」という証拠は存在しない、と裁判所は判断しました。
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購入者のレベルは?
混同や誤認の可能性はその商品の購入者の認識するレベルによって異なります。
WWに言わせると一般の消費者は代替食に対してそれほど知識がない。
だから消費者は当社とSFとの関係を混同する可能性が高い、ということになります。
しかも低価格の商品の場合、選択、購入にそんなに時間をかけない。
ていねいに比較をしない。
だから混同の可能性が高い、との主張です。
では代替食の購入者はどんな人々だろう。
WWのプログラムに参加するぐらいだからダイエット用の代替食の選択は慎重に行うはず。
プログラムに参加していない人でも、わざわざローカロリーの冷凍食品を買うぐらいだからやはり慎重に選択するはず。
そうであればほとんどの購入者はこの商品をいい加減に選択するとは考えられない。
WWの主張に反して混同の可能性は低いといえるだろう、と判断しました。
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